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すべて奪われてもいい(1)

このお話しは2部構成になっています

すべて奪われてもいい (1)
すべて奪われてもいい (2)

※全て別窓で開きます。




「若いのは食うのが早いw」

「そうですね~^^ でもみんな、
 美味しそうに食べてくださいます^^」

「そら~ 美味いさかいな^^
 ここのラーメンは。 おい!お前ら
  食うたもんは先に帰っとけよ?」

若者たち
「はいっ! ごちそうさまです!」

「おおきに~ ありがとうございました」

「なあ~ 奥さん~?
 考えてみたらどうや~?」

「ええ~ 主人に話してみます ・・・」

「小さい商店の集まりや~
 みんなで助け合ってやっていったらええ」

「ただうちは週に一度の出店で
 そんなに売り上げもありませんし~
  そこをうちの人が ・・・」

「金銭は要求せんへんで? 奥さん~?」

「えっ そうなんですか?」

「俺はそんなこと一切考えてへん
 あんたら夫婦を応援したいだけや?」

「はぁ~ 有り難いことです ・・・」

「会えて良かったと思ってくれるハズ
 先代ならとっくに奥さんをものにしてる」

「えっ ・・・?!」

『明日風 主婦 45歳』 妻の告白


「あんたみたいな極上の美人
 どこ探してもこの辺にはおらん
  先代ならとうに目をつけてるやろ」

「あはぁ~ ・・・」

「このエリアをまわってた保険屋の人妻と
 そこの料理屋の女将と銭湯の奥さん
  三人ほど一瞬でものにしよったしな~」
  

主人(鈴木高志 48歳)の夢だった
屋台のラーメン店をオープンしたのが
一年前の春のこと

ラーメン好きが高じて
定年まで待てなかった熱い想いに
私が折れた結果です。

保健所や警察署などの
あらゆる難関をクリアにしやっとの思いで
出店に漕ぎつけた矢先
書類に不備があると言われ
立ち退きを命じられたのが営業5回目の夜


主人
「岩佐さんかな ・・・?」

「決めつけるのは性急よ
 そこまで意地の悪い人には見えない」

「そやけど一度パスしたもんが
 あとで覆されるってオカシイやろ?」

「仕方ない ・・・
 今のお客さんが帰られたら
  お店たたみましょう~?」

「納得いかんな~ 俺の夢を奪うつもりか?
 家に帰って書類を読み返してくるわ?
  3時ごろ、一馬を寄こすさかい
   店じまい手伝ってもらえ」

「わかった。 あなたはそのまま ・・・」
「仕事に行く じゃあ頼むわな?」

主人の本業はシステムエンジニア
だからお店は週に一度、土曜の夜だけ
店出しが主人で店じまいが私と息子
日曜出勤も多い主人は途中で帰宅します

岩佐さんとは
この地域にある裏稼業のドンのような存在

その岩佐さんが出店初日に来られ
グループへの加入を主人に勧めましたが
主人はそれを断りました
正式に許可を取ってるから
的屋のグループに入る必要はないと ・・・


岩佐
「ご主人戻ってくるんか?」

「いえ~ 相当ショックだったみたいで
 今頃、血まなこになって
  書類の不備を探してると思います」

「片づけは一人で出来るの?」

「息子が三時ごろに ・・・」

「そか~ ほなッ
 他の客も消えたし奥さんと二人で
  お酒でも飲もうや~?」

「お酒は12時までなんです ・・・」

「店を閉めたらええッ
 俺もそっち側へいくさかい ・・・」

屋台を出している場所は
横断歩道橋の階段下
三角の空間があるところです
その中で車道に背を向け接客します

岩佐さんの言われた「そっち側」とは
まさにその空間のこと
屋台を閉じてしまうと
誰からも見えない死角になってしまう


岩佐
「うちの所属になれば警察もあまなる
 今まで通りここで営業出来るで?」

「はぁ~ それは主人も
 知っていると思います ・・・」

「俺は奥さんを気に入ってる
 わかるやろ~? 変な輩が来ても
  奥さんには指一本触れさせへん!」

「あぁ~ 指が ・・・^^」

「ははっ^^ 触れさせへん言うてるもんが
 触れてたらアカンわな~^^
  そやけど後ろに看板が立ってるし
   ここなら誰にも見えへん ・・・」

「息子が来ますから^^」

「3時やろ? まだ12時半や
 酒が足りひんな~ 奥さん 注ぐわ?
  たまにはグイっと飲み~な!」


岩佐広幸さん 45歳 私とおない年
主人が銭湯で何度か見たそうですが
背中一面に墨の入ったヤクザ屋さんで
的屋も束ねるこの辺りの大物

確かにこの方に従えば
営業はしやすくなるでしょうが
私が主人にしつこく勧めると怪しく思われる
だから ・・・

「裏からこっそり警察の人に ・・・」

岩佐
「うちには所属せんと?ってことか?」

「はい~ ・・・
 主人は必死になって
  別の道を探すと思います ・・・」

「石頭やな~ ・・・
 まあそれも出来んことはない ・・・」

「お金がいるんでしょうか?」

「奥さんから金は取らへんって
 さっき言うたやろ? そやな ・・・
  そのぽてっとふくれた唇で手打つわ?」

「唇 ・・・?」

「他のヤクザもんに頼み事したら
 奥さんの全てを奪っていきよるで?!
  先代の例も話したとこやろ~?」

「はぁ~ でも ・・・」

「奥さんはじっとしとき?!
 そのままイスに座って ・・・
  俺が近づく。 無理やりされたなら
   奥さんの貞操に傷はつかへん!」

(チュっ にゅる ・・・)

「はぁ~~ ・・・」

岩佐
「もっと舌を出したり~な?」

(ジュル にゅる~ レロレロ ・・・)

「はぁ~ はぁ~ ・・・」

岩佐
「どうした~? もう終わりか~?」

「はぁ~ これ以上は ・・・」

「よっしゃ! 今日はやめといたろ
 毎週土曜、ご主人が帰ったあと
  ここへ来るさかい。 覚えときや?」

「覚えるって ・・・?!」

「キス一回って言うたかいな~? 俺」

「えっ? 毎週?!」

「奥さん そんなにウロこくな?
 たかがキスや? それで店も安泰
  ただし、ヤクザもんと関係もったら
   後戻りは出来ひんぞ~?」


これが昨年5月、上旬の出来事 ・・・


続く ・・・

すべて奪われてもいい (2)


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